研究設備の紹介

摩擦試験装置

トライボロジーには関連するパラメータが多いため、研究は実験が中心になります。そのさい、摩擦潤滑特性に影響する因子を抽出し特性を明らかにするためには、摩擦試験装置を独自に開発する必要があります。PIが学生時代に工作機械の研究室で実験装置を試作するために機械加工を学んだ経験を活かし、これまでに多様な摩擦試験装置の開発を行い、そのスキルは企業との共同研究でも活かされてきました。MEMS&トライボロジー研究室においては、PIの指導の元、学生が摩擦試験装置の設計や組立を行い、卒業研究、博士課程の研究に利用しています。

超高真空マイクロトライボロジー試験機

試験装置全景
試験装置主要部

凝着力(引き離し力)と摩擦力を測定可能。最高到達真空度は-7乗Pa台。試験片の予備加熱、真空蒸着、イオン銃によるクリーニング、差動排気による雰囲気制御が可能。1µN以下の力分解能で摩擦力や、荷重、引き離し力を測定するために、駆動にPZTアクチュエータを用い、全体を高精度の除振台上に設置しています。ベーキング中の排気はターボ分子ポンプで行いますが、摩擦試験中の排気はスパッタイオンポンプに切り替えます。

どのような実験ができるか?
・10 µN〜5 mNの低荷重での摩擦測定
・凝着力(引き離し力)測定
・1 nm/sからの低速摩擦測定
・雰囲気制御実験(酸素分圧の影響など)
・低速・低荷重の摩耗試験
・摩擦異方性の測定、など

回転型Flat-flat摩擦試験機

試験装置全景
試験片の取り付けと摩擦測定方法

転がり軸受のNRRO(non repeatable run out)計測に使用されてたエアベアリング回転機構を利用した回転型の摩擦試験機です。振動の発生が少なく安定した回転が可能です。板ばねの変位を高感度の静電容量式変位センサで測定しているため、測定系の剛性が高くなっています。また、同型のセンサを用いて潤滑油によるサンプルの浮上を、1nmの分解能で測定可能です。

どのような実験ができるか?
・平面同士を接触させた状態での流体潤滑特性の検討
・ディスク試験片に単結晶基板(SiC、Al2O3、Si)を用いることで、ナノスケールのテクスチャリングの潤滑条件での摩擦・摩耗試験
・潤滑油による浮上量変化の測定

超低速摩擦試験機

試験装置全景
吉田君が設計し、パンタグラフ変位拡大機構を放電加工し、組み上げました。その後、林君が改良し今の形になりました。
相対角度を変化せせる方法
テーブルの角度を調整している様子

PZTアクチュエータの変位を拡大して、約0.3mmの摩擦ストロークを実現しています。また、摩擦位置を回転中心とするスイベルテーブルによって摩擦試料間の早退角度を変化させることが出来ます。荷重及び摩擦速度の目安はそれぞれ、1〜100 mN、0.1〜1000 µm/s。

どのような実験ができるか?
・超低速の乾燥条件、潤滑条件で、荷重依存性や速度依存性を調べる摩擦試験。
・摩擦異方性の測定
・静止摩擦と動摩擦の比較

中低速往復摩擦試験機

試験装置全景
前田吉敬君が設計および組立を行いました。シャフトモータの制御に苦労しました。その後、熊田君が荷重負荷部の改良を行い、松重君と大森君が位置決めテーブルを追加しました。なお、温度制御した油中で実験を行うときは、越原さんが設計したオイルバスを取り付けます。

振動発生の小さいシャフトモータを摩擦駆動に用いて、クローズドループ制御によりステージを駆動します。そのため、速度を確実に制御して、ノイズの少ない摩擦計測が行えます。精密直動ステージにより、摩擦位置を摩擦方向に対して調整可能です。

どのような実験ができるか?
・速度調整範囲が広いため、潤滑条件下での速度特性を調べる摩擦試験

高真空往復動摩擦摩耗試験機

フタを外したところ
元々あったチャンバーを使って、安藤研一期生の柴田君が作りま、荷重機構を阿部君が改良しました。最初の立ち上げ時に、フィードスルーがリークしていて、見つけるに苦労しました。
構造の概要

標準的な真空中の摩擦摩耗試験です。摩擦駆動は、真空チャンバー外に設置したリニアアクチュエータによって行います。リニアアクチュエータの反対側にはリニアガイドを設置し、サンプルテーブルを両側から支えることで剛性を確保すると共に、真空圧が機構の動作に与える影響を相殺しています。スクロールポンプとターボポンプの排気により、最高到達真空度は10の-4Pa台です。

どのような実験ができるか?
・超低速の乾燥条件、潤滑条件で、荷重依存性や速度依存性を調べる摩擦試験。
・摩擦異方性の測定
・静止摩擦と動摩擦の比較

計測装置

環境制御型AFM

PIにとって最後に購入したSII社製のAFMです。SIIには、セイコー電子工業の頃から、個別事案にご対応頂き、研究を支えて頂きました。

構成・仕様
SIIナノテクノロジー社製
プローブステーション:SPI3800N
AFMユニット:SPA300HV
スキャナ:80µm(x-y面内)
最高到達真空度:10-5Pa

オプション、特殊仕様
電流分布(最大バイアス電圧100V:特殊仕様)、LM-FFM(スキャナをカンチレバーの捻れ方向に細かく振動させて形状の影響を受けにくい摩擦力分布測定が可能)、引き離し力分布測定(接触時間0〜1s:特殊仕様)、加熱冷却ステージ(300℃〜–100℃)、光学顕微鏡による試料の直上観察、電流導入端子

大型サンプル対応AFM

構成・仕様
NanoSurf社製 CoreAFM
https://www.qd-japan.com
XY:100 µmx100 µm, Z:12 µm
サンプルサイズ:100mmx100mm
光学観察像の視野サイズ
トップビュー:1.2mm×1.8mm、サイドビュー:0.5mm×0.5mm

オプション、特徴
電流分布測定
横方向からの光学観察、大型サンプルステージ

日立AFM

構成・仕様
日立ハイテクサイエンス社製
https://www.hitachi-hightech.com/jp/ja/company/group/hhs/
プローブステーション:AFM5010
AFMユニット:AFM5100N
XY:100 µmx100 µm, Z:15 µm
サンプルサイズ:最大約20mm

オプション、特徴
シグナルアクセスモジュール
レンズプローブカンチレバー取り付け
ペルチェ素子によるサンプルの温度制御
防音密閉カバー
Dry Aiir導入による湿度制御

レーザ&共焦点カラー顕微鏡

構成・仕様
レーザーテック社製
https://www.lasertec.co.jp
OPTELICS HYBRID スタンダードモデル1.3
視野:6.5〜3,0000µm
幅測定再現性:10nm
高さ測定再現性(分解能):10nm(0.4nm)
対物レンズ:10倍〜150倍

特徴
白色光源とブルーレーザ光源を切り替えて使用することが可能。白色光源を利用した時には、観察対象の高さ情報に色の情報を加えた表示が可能。レーザ光源の場合は、測定分解能が向上。

走査型電子顕微鏡

構成・仕様
テクネックス工房社製
http://www.technex.co.jp
TinySEM(大型試料室モデル)
最大解像度:2560×1920

特徴
永久磁石型電子レンズを使用しているため、ピントが安定している。フィラメント交換後、スティグマを調整すると、そのまま電源を切ってもスティグマの再調整が不要。試料室が大きく、下部のフタを外せるので、Feedthroughの増設などの改造も可能。

接触角計

加工・サンプル前処理用設備

3元スパッタ成膜装置

構成・仕様
日電(キヤノン)アネルバ社 SPF-430H
ターゲット:4インチ、3元
基板:4インチ
排気:ターボ分子ポンプ+油回転ポンプ
基板最大数:5

特徴
基板を回転させながら、あるいは静止させた状態で成膜が可能、基板の回転機構とターゲットのシャッターの操作の組み合わせで、3種のうちの任意のターゲットを選択可能

小型スパッタ装置

両面マスクアライナ

構成・仕様
ユニオン光学
光学顕微鏡によるウェハの上面と下面の同時観察により裏面のパターンを基準としたアライメントが可能
マスクサイズ:5インチ
ウェハサイズ:4インチ
光源:USH-250LT(ウシオ電機製)

Y先生が使用されていた装置です。現在も大いに役立っており、とても助かっています。

ダイシングソー

構成・仕様
岡本工作機械 ADM-60
ワークサイズ:幅&奥行き100mm以上、高さ凡そ60mm以下
位置決め設定分解能:1 µm
X&Y自動送り

PIが利用している装置の中でおそらく最も長期に亘って活躍しています。導入された当初は、O氏により研削による微細加工に利用されていました。その後T氏の管理を経て、最終的に安藤研究室で管理しています。その間、4回引っ越しをしました。

研磨盤

電気炉

プラズマクリーナ

構成・仕様
Harrick社製 PDC-3XG
残留気体を利用して発生させたプラズマにより、表面のクリーニングを行う。緩やかなスパッタとともに、表面が酸化されるので、親水化処理にも利用可能。

ニックに教えてもらい、導入しました。

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